2019
works
夏季屋外空間におけるWBGTおよびSET*の低減手法に関する研究
木下悠也 西晃宏
本研究では、暑熱環境の緩和による熱中症リスクの低減および屋外空間での快適性の向上を図るため、保水性舗装、遮熱性舗装、街路樹、ミストに着目した上で、夏季屋外における実測を行い、WBGTとSET*を用いて熱中症リスクの低減と快適性の向上の関係を確認する。実測結果から、道路散水、街路樹、ミストの組み合わせにより、基準点と比べたWBGT低減の平均値は最大で約2.1℃、SET*は約5.8℃であった。また、WBGTとSET*との間には相関が見られた。遮熱性舗装は本研究においては熱中症リスクおよび温熱感覚とも悪化し、暑さ対策として適当ではないと考えられる。
3Dデジタル環境カルテの作成と活用に関する研究
~金沢市立中央小学校を事例として~
近年、ヒートアイランド現象対策として環境配慮型の建築設計が求められている。本研究では、環境配慮型の建築設計を支援する「3Dデジタル環境カルテ」の作成を行う。汎用性GISを用いて作成した建物の3Dモデルとベースレイヤーに、建物表面温度の解析結果、既往研究における気温・気流分布図等のデータを統合した。作成した本環境カルテは、学生を対象とした使用感調査より得られた意見を基に改善し、Web公開した。さらにプロの建築家にヒアリング調査を行い、本環境カルテの一定の有効性を確認するとともに、今後の展開に関する知見を得た。
大音師洋実 神田柊哉
高橋克己 山田惟月
熊本地震で建設された仮設住宅の通風に関する研究
~甲佐町白旗仮設団地を対象に~
谷野晁介 久保拓実 瀬戸優希
本研究では既往研究におけるアンケート結果を踏まえた上で、熊本地震で建設された仮設住宅配置を対象に実測を行うとともに、東日本大震災での仮設住宅配置を比較対象として気流解析を行う。アンケート結果の分析では、通風と温熱環境(春・秋)の満足度に相関関係があった。現地実測と気流解析により、通路幅を拡張することで上空風が地上通路に入りやすくなること、室内の通風経路に対し平行の通路風の方が室内に取り込まれやすいこと、熊本の仮設団地は東日本に比べ通路内の風通しは改善されたが、通路風を室内に取り入れる点では課題が残ることを確認した。
コケ植物の吸放湿特性に関する研究
~吸湿等温線の作成と考察~
本研究では、既往研究の乾燥スナゴケ試験体の熱・水収支に関する屋外実験の結果を踏まえ、4種類のコケ試験体を使い実験を行い、熱・水収支による重量変化の把握とその考察を行った。密封容器内におけるコケ植物と吸湿材などの吸湿量の比較考察と、温度、湿度調整を行える環境下で実験を行い吸着等温線の作成を行った。実験の結果、使用した気乾状態のコケ4種には吸湿性があることが分かった。さらにスナゴケは、コケの生き死ににより吸湿量が変化し、生きた物の方が吸湿量が2倍ほど多いことからスナゴケの形状以外に吸湿現象に関わるものがあると分かった。
青山和弘 飛田陸臣 軽米真太郎
七尾市袖ヶ江地区における内水氾濫の実態調査と浸水マップの作成
成田卓海 樋熊俊太
内水氾濫が多い石川県七尾市の浸水実績を残すことを目的に、袖々江地区周辺の浸水実態調査を行った。過去15年間で最も内水氾濫の被害が大きかった2019年8月22日を対象とし、0.1m間隔の等高線や写真による浸水推定、住民ヒアリング調査により浸水マップを作成した。作成した浸水マップは七尾市の地域住民に配布される見込みとなった。浸水域と排水設備・土地被覆との関係性を明らかにすること、また、内水ハザードマップが作成されていない地域や浸水実績が十分把握されていない地域への展開が今後の展望である。
穴あきレンガによる蒸発冷却舗装システムの試験施工
本研究では既往研究によって得られた結果をもとに使用するレンガの材質と形状を検討し、その強度および蒸発冷却効果の確認を行う。また、実用化にむけて実際に試験施工を行い、水質や植生を調査する。穴あきレンガの材質・形状を有効保水量、白華の有無、強度面等から選定した上で、強度試験を行い、強度基準を満たすことを確認した。試験施工における半年間の実測により蒸発冷却効果およびその持続時間が理論上の推定値と同等と確認した。水質や植生にも問題がないことを確認した。対象レンガの暴露試験2年目において白華に類する現象が確認された