2020
works
建築設計教育のためのデジタル環境カルテの作成に関する研究
齋藤優至 別府航成
環境配慮型の建築設計を支援する「デジタル環境カルテ」について、金沢市柿木畠周辺を新規対象地として作成し、金沢工業大学建築学科の科目「建築設計Ⅱ」受講生に提供した。3Dビューアーでは気流表現の改善等を行なった。またスマートフォンで視聴できる動画コンテンツ、PDFや紙面で利用可能な環境設計の手引き等を新たに提案・作成した。使用感調査の結果から、一定の有効性は確認されたが、本番授業での使用率は前年度と比べ低下していた。今後、デジタル環境カルテを活用する科目や指導の方向性の検討を行うことが望まれる。
コケ植物の種類と形態に着目した吸放湿特性に関する研究
本研究では、既往研究を踏まえ、5種類のコケ試験体を使い、コケ植物の部位、形態、種類と に着目し実験を行い、温度、湿度調整を行える恒温恒湿室を用いて実験を行い、吸着等温線の作成を行った。結果、使用した気乾状態のコケ5種は吸湿と共に放湿することが判明した。さらに、ヒステリシスパターンとの比較により、スナゴケ、スギゴケ、ハイゴケはスリット型のメソポア(2~50㎚の細孔)を、ギンゴケ、ネジクチゴケはスリット型のマイクロポア(2㎚以下の細孔)を保持している可能性が示唆された。
丸山大樹 吉田陸
金沢市中心市街地における
環境配慮型まちづくりに向けた計画指針図の作成
新井靖人 古閑朝陽
本研究では、金沢市中心市街地を対象に、都市環境の観点からの現状分析と問題点の把握を行い、日中高温化対策、冷気流の誘導、人工排熱削減、緑地保全・緑化推進、河川保全の指針を盛り込んだ計画指針図を作成した。また計画指針図を補うために、緑地・河川保全以外の指針案に対して計11の具体策を提示した。それらを用いて、まちづくりに関わる行政、専門家に対しヒアリング調査(意見交換会)を計3回行い、計画指針図の方向性が間違っていない等の意見が得られ、まちづくりにおける計画指針図の一定の有用性を確認することができた。
住宅内トイレの熱中症リスクに関する実測研究
夏季の住宅内トイレでの熱中症リスクを把握するために金沢市・野々市市のトイレで18カ所の室温測定(3日間)、8カ所の室温測定(20日間)、WBGTとSET*を用いた実測(3日間)等を行なった。結果として、夏季晴天日の午後においてWBGT 33.7℃と危険基準31℃を2.7℃上回る熱中症リスクの高いトイレ(鉄骨造、西側に大きな窓あり)が確認された。また外気に面していないトイレは室温が低く、最上階のトイレは室温が高くなる傾向を確認した。夏季20日間の測定では、8か所中7か所のトイレ室温が期間中75%以上の時間で環境省の推奨する上限値の28℃を上回った。
木本康誠 山口凌世
冷気流を住宅地に誘導する施策の提案と数値解析評価
岡勇帆 中村亮太
過去の実測より冷気流が生成するとされる金沢城公園、冷気流が妨げられるとされる香林坊(中高層建物群)、冷気流を誘導したいと考える香林坊以西(風下)の住宅地を対象とし、冷気流を誘導する施策の提案とその数値解析評価を行なった。解析結果より、幹線道路への散水、中高層建物緑化のケースでは住宅地での気温低下は0.02℃未満であったが、中高層建物を一部撤去したケースでは0.025℃、建物を全撤去したケースでは0.152℃の気温低下が認められた。また冷気流による気温低減には、緑地の量・配置と風の条件(風向・風速)も大きく関わる可能性が示唆された。
蒸発冷却舗装システムの実用化研究
水質汚染および冷却性能の経年変化に着目して
蒸発冷却舗装システムに用いる舗装ブロックの冷却効果の経年変化を確認する暴露試験では、対象としたブロック3種において、十分に保水した状態でも「表面温度-気温」の値が10℃を超える日が夏期に多くみられた。各月の「表面温度-気温」の日最高値平均は、暴露2年目、3年目と徐々に高くなる傾向にあった。
水質汚染による影響調査では、臭気・pH・濁度を指標とした今回の数パターンの実験条件において、舗装システムや人間に与える悪影響はほぼなく、水に溶ける物質の希釈・溢流に関する基礎データを得ることができた。
木村凌也 清水亜龍
地方における創作者(クリエーター)の活動空間の提案
本研究では、兵庫県新温泉町浜坂の関係人口増加を目的に、インターネットを媒介とする創作者が創作活動に没頭できる「シェアアトリエ+宿泊施設」を提案した。創造性や生産性を高める手法の分析を行い、その結果から浜坂の歴史を形成した味原小径を「思考の道」と位置づけるとともに、その周辺の歴史的町並みに点在する空き地を活用し、思考したモノを制作する拠点を設計した。それぞれの拠点は、思考に出掛ける「中間領域」、思考したモノを抽出する「ラウンジ」、制作に没頭する「アトリエ」から構成され、創作活動を推し進める空間・環境とした。
田熊良伍
環境舗装・街路樹・ミストを用いた屋外の
熱中症リスクに軽減に関する実測研究
富樫秋平
夏季屋外での熱中症リスク軽減と快適性向上を図るため道路散水、遮熱性舗装、街路樹、ミストの対策手法およびWBGT、SET*の指標に着目して実測を行い、既往研究を含めた3年間のデータを分析した。その結果、道路散水、街路樹、ミストの3手法の組み合わせは、基準点と比べたWBGT低減の平均値は約2.4℃であった。WBGTとSET*の関係について、全体的に相関関係が見られたが、風速等によりばらつきが見られた。遮熱性舗装はWBGT、SET*ともに通常舗装より高くなる傾向にあった。道路散水はSET*を平均で約1.3℃低減させたが、被験者は疲労や不快を感じる傾向にあった。