2023
works
斜面緑地で生成される冷気流の気温低減効果に 関する実測研究
- 金沢市野田山周辺を対象に -
清水 柊吾 藤畑 好浩
本研究は、夏・秋季において、緩やかな片斜面である石川県金沢市野田山周辺の斜面緑地とそこに隣接する市街地を対象とした上で、気温、風向風速を計測し、斜面緑地が持つ気温低減効果について分析・考察を行なった。移動実測・定点観測の結果より、大きな斜面緑地(42ha以上)から発生する冷気流の気温低減効果が最も大きく、そこと接する市街地の気温は、冷気流の影響が弱い地点よりも3∼4℃低い傾向にあった。緑地から約1.8km離れた市街地に冷気流はほぼ到達していなかった。また、夏季と秋季では、夏季の方が明け方まで安定した冷気流の発生を確認できた。
野々市市北国街道におけるウォーカブルなまちづくりに向けた 歩行者分布・意識調査
大西 良宜 八尾 朋樹
野々市市北国街道とその周辺をウォーカブルな環境へ改善するためのデータを収集することを目的に、夏・秋・冬における歩行者・自転車・車の分布調査、街道歩行に関する意識調査を行った。分布調査から、平日の通勤時間帯に約0.45人/100mの歩行者と約0.36人 /100mの自転車で最多となることが確認された。意識調査から、北国街道の歩行者はほぼ近隣住民であり、車が少ない時間帯に散歩する人が多い傾向にあった。また、道の狭さや街道への用事の少なさ等、歩きやすさに必要な安全性・利便性が不足していることが確認された。
ヒートアイランド対策の普及に向けた費用対効果の高い舗装冷却システムの検討
-蒸発冷却舗装システムの長期性能確認と
舗装散水システムの提案-
江指 匡 小野 航輝 石田 遥稀
ヒートアイランド対策として、蒸発冷却舗装システムの長期冷却性能の確認、舗装散水システムの提案、費用対効果の算出を行なった。蒸発冷却舗装システムで用いた全3種のブロックは、最低3年間は冷却性能を維持することを暴露試験により確認した。スプリンクラーを用いた舗装散水システムの提案を行い、実測した結果、昼間15回/h(19.3L/㎡/日)と5回/h(7.1 L/㎡/日)、夜間5回/h (6.9L/㎡/日)と2回/h(3.0 L/㎡/日)の散水では、十分な冷却効果が確認された。費用対効果を導出した結果、舗装散水システム昼間4回/h(4.6 L/㎡/日)が最も費用対効果が高いことが確認された。
環境シミュレーションを活用した建築設計教育に関する研究
-気候分析、ボリューム検討、間取り・開口部検討に至る手順書の見直しと実践-
大石廉二
本研究では、環境シミュレーションを用いた建築設計教育における昨年度までの手順書の改善と授業での実践を行なった。手順書の改善として、定量的な評価指標、改善プロセスの例示、UA値の計算を追加した。改善した手順書を用いた授業を学部3年生に実施し、手順書の有効性を確認した。その結果、外部風解析の手順書の満足度は低かったが、作成した手順書の満足度は高く、特にUA値の計算は開口部の大きさの検討に有効的であることが確認できた。今後の課題は、外部風解析の手順書改善と外皮に関する定量的な評価指標の作成である。
夏季の観光客の街歩きを快適にする ルートマップの作成
~近江町市場から兼六園を対象とした暑熱環境実測を もとに~
安藤成哉 岩佐 歩 鴻原 祐美
金沢市の近江町市場~兼六園の範囲の歩道を対象とし、観光客が暑い夏でも観光地を快適に歩けるルートマップを熱環境実測等の結果を踏まえて作成した。人流調査では近江町市場と金沢城公園石川門付近で人が多く、また全体の6割を占めた日向では、WBGTが「危険」、SET*が「非常に不快」となる箇所がほとんどであった。ルートマップを作成するにあたり実測結果に加え、設定した見所(観光スポット)別に、歩行ルートの距離の短さ、登りの少なさ、人流の少なさ、日陰の多さ、SET*の低さからなる5要素の評価が高くなる推奨ルートを提案した。
手取川扇状地の水田地帯と金沢・松任市街地の気温分布に関する実測調査
瀧澤空大 中田祐輔
本研究では、手取川扇状地、金沢・松任市街を対象に移動実測・定点観測を行い、夏季晴天日の気温分布図の作成等を行った。結果として、少なくとも12~15時は海岸から2kmの範囲で海風の影響が確認でき、1~2℃気温が低下していた。13時30分〜15時の実測では約2m/s以上の海風が吹き、水田が多い地域ほど気温が低減し、松任市街は金沢市街と比べ1℃ほど気温が低い傾向にあった。これは海側の水田地帯の空気が内陸側へ移流した影響と考えられる。また手取川扇状地の水田は金沢市街に比べ、1日を通して1〜3℃ほど気温が低い傾向にあった。